はじめに

コロナウィルス(COVID-19)でリモートワークの頻度が増加している人も多いと思う。そうなると、必然的にリモート会議の数も増える。ここで課題として上がってくるのが、リモート会議に対する姿勢、また練度だ。

リモートワークを多用して、リモート会議に慣れているチームもあれば、もともとオフサイト出社がメインでリモート会議に慣れていないチームもある。前者の慣れているチームであれば、スムースに適応できると思うが、後者の不慣れなメンバが多い部署・チームは、もっと効果的なやり方に気づいていない可能性もあると思う。(この場合、前者のメンバはストレスを溜めることにもつながる…。たとえば、一方的に音質の悪いリモート会議を想像して欲しい)

そこで、この記事では自身の5-6年のリモート会議経験や、見聞きした情報から良いと思っているプラクティスを紹介していく。それによって、少しでもより効果的なリモート会議が増えれば良いと思っている。

以下で早速、個人的に重要と考えるプラクティスを紹介していく。賛否あるプラクティスもあると思うので、良さそうな点がもしあればTryしてみる、ぐらいのスタンスで読んでほしい。また、いくつかのプラクティスはオフラインでも応用可能なものも含まれている。

徹底的に音にこだわる

リモート会議では、映像よりも音質のが遥かに大事だ。リモート会議では、特殊なユースケースを覗いて4K/8Kといった解像度は必要ない。一方で、音質が悪いと非常にストレスがたまる。何度も聞き返す必要が出てくるなど、会議中に非常にフラストレーションが溜まることになる。そのため、音質は重要であり、音には徹底的にこだわるべきだ。

ヘッドセット、イヤフォンマイクを使う

Laptop付属のマイクにもそれなりに品質が良いものもあるが、非常に広範囲の音を拾ってしまい、聞き手に多くのノイズを与えてしまうことがある。そのため、より指向性があり、口元の音声を拾えるヘッドセットが好ましい。別に20k-30k円のものを購入するというのではなく、2k-3k円のものでも遥かにマシになる。

最近のリモート会議需要で、ヘッドセットが品切れのケースも多い。その場合は、iPhoneやPixelに付属しているイヤフォンマイクでも十分良い。

ヘッドセットには無線ではなく有線を

Air Podsなどの、Bluetoothを利用した完全ワイヤレスイヤホンが普及してきている。ただ、Bluetoothは無線を使う性質上、どうしても安定性は有線に比べて劣る。また、電池切れが起きる場合もある。会議中に電池が切れて、別のイヤフォンなどに差し替えている間の時間は非常に無駄だし、全体の会議エクスペリエンスは非常に低い。

また、Bluetoothを使うと、わずかではあるがレイテンシが増加する。気づかないレベルかもしれないが、レイテンシは小さければ小さいほどよい。

(あと、Air Podsのマイクで拾っている音質はそこまで良くない…)

電話でのリモート会議参加はやめる

Zoom/WebEXなどのリモート会議には、電話回線を使った参加も可能である。たとえば、数人がPCからWeb会議に参加して、数人が電話回線で参加というようなケースだ。これは極力避けること。なぜならば、電話回線で参加した場合の音質が非常に悪いからだ。

伝統的な電話回線は、G.711というコーデックを使っており、現代のWeb会議で使われるコーデックに比べて非常に音質が悪い。

電話での参加はどうしようもない場合(ISPが完全にダウンなど)の最後の手段、ぐらいで良い。

Laptopには必ず電源を挿して参加する

今どきのCPUは、常に全力で性能を出しているわけじゃない。特に動作しているマシンがバッテリー動作している場合には、クロックを下げて動作しており、思った以上にパフォーマンスが出ないことがある。

リモートビデオ会議というのは、ちょっとしたオフィス系のソフトウェアより遥かに処理が重い。ビデオをエンコードして送り、複数の会議参加者から届くビデオをデコードして、画面上にレンダリングするという処理は、非常に重い処理なのだ。(試しに、リモート会議中にタスクマネージャや、アクティビティモニタからCPU利用率を確認して欲しい)

マルチコアのCPUを全て使い切っている、100%近くに張り付いている場合、音声の処理にも影響がでているだろう。たとえば、一部の音声が途切れる、レイテンシが一時的に増加するなど、音質に悪い影響がでているはずだ。ネットワーク回線が悪いために、同様の事象も起きるケースもあるが、ネットワークを疑う前にまずはLaptopに電源を挿そう。

もちろん、処理性能の高いlaptopであるほど良いのは言うまでもない。

マイクミュートの使用

マイクは発話者の想定以上に、音を拾っているケースがある。特に誰かが話している場合に、話していないメンバの音を拾っていると、本来聴こえるべき音が聴こえなくなっているケースがある。

だから、話をしていない場合はマイクをミュートすべきだ。(ただ環境音が静かな場合はミュートしなくても問題ない)

1人でもリモート参加なら全員リモート参加する

たとえば、4人が1つの会議室で参加、2人がリモートで自宅から参加、というのはやめて、1人でもリモート参加者がいるなら参加者全員が個別のマシンで参加しよう。これは、オフサイトでの複数人ミーティングに慣れている場合は、マインドセット的に少しチャレンジングかもしれない。ただ心を鬼にして、全員リモートで参加する。

なぜ、全員リモートで個別に参加しなければならないのか?

オフサイトとオンラインのハイブリッド状態のリモート会議は弊害が非常に多いからだ。たとえば、よくあるのは共通のカンファレンスマイクから距離が遠いメンバの声が聞こえない、というケースだ。その他にも、カンファレンスマイクをミュートに頻繁にするわけでもないので、会議室の近くの廊下の音や、ドアの開閉音を拾ってしまい、集中を乱すノイズ源になりやすい。さらに、オフサイトの数名で盛り上がってしまって、議論が先に進んでしまい、リモート参加者がキャッチアップできない、というケースもある。

また、共通のカンファレンスマイクを使う場合は、おそらくlaptopも1台を代表ホストで参加しているだろう。この場合、外付けの広い視野を持つカメラを使ったとしても、全員の顔が映らない、映っても小さい顔にしかならない、一部の顔が歪んでいる、という問題もある。

各自が個別の環境で参加できない、という場合のみカンファレンスマイクを共有で使って参加、ぐらいで良い。

もし、カンファレンスマイクを使う場合は、高品質なものを使おう。ここは費用対効果が非常にでる部分で、たとえばYAMAHAなどの数万円の製品を使うこと。

マイクは口元に近いほどよい

さきほどのケースで、カンファレンスマイクを使う場合は、できるだけ参加者が近くで話せるようにしよう。距離が離れると音質は線形的に悪くなるのではなく、指数的に悪くなる。

たとえば、オフサイトで10人が集まる会議室で、カンファレンスマイクを中央に置く場合、端っこにいる参加者の声はきちんと拾えているだろうか?もし、会議を録画しているなら、ビデオを再生して音質・音量を確かめてみると良い。おそらくマイクから最も遠い発話者の声が、ほぼ録音できてないケースもあるだろう。その音量が、リモート参加者が聞こえている音量と同じになる。仮に、マイクから遠いメンバが質問などを挙げた場合は、マイクに近いメンバが復唱すると良い。(これは、40人などのオフサイトの研修で、慣れた講師が全員に質問が理解されるように復唱するのと同じ方法だ)

事前に音声や映像のテストをしておく

余裕を持ってリモート会議に参加して、事前テストする。たとえば、Google hangoutsなら、会議に参加する前に自分のカメラ画像や、音声の出力インジケータが見える。Zoomであれば、テスト用のWebサイトが用意されている。

ビデオを表示する

カメラの画像をオフにするのではなく、常時表示する。

カメラ映像は、誰かが発言しているときのリアクションの確認に使える。 もし、全員が映像ミュートしていて、一人が喋っているとなると、暗闇に向かって喋り続けることになり、発話者への負荷が非常に高い。カメラ映像があるだけで、負荷を軽減できる。

また、カメラを全員がONしている方が、チームの距離感が縮まる。子供やペットの乱入で楽しい光景が映るかもしれない。

この際の注意点として、光源の配置に気をつけること、という点がある。たとえば、後ろに窓があって日光が入る場合、完全に逆行になるためビデオが表示されてていても、顔が全く見えないというケースがある。これは効果的なミーティングにはつながらない。

なお、帯域の問題などで音声にまで悪影響がある場合は、ビデオをミュートしたほうが良い。前述したように、音声のほうが映像よりも遥かに重要なためだ。(なお、Web会議サービスによっては、Incomingの映像をオフにする、または送信するビデオの解像度を下げる、などの機能もあるのでそちらも活用可能)

ミーティングの設定時間を25分/50分にする

ミーティングの設定時間を1時間という切りが良い時間にして、それが連続してしまうと、リモート会議からリモート会議への遷移時間がほとんどなくなる。結果として、次のミーティングに2-3分遅れて参加し、他メンバを待たせる、といったケースが発生する。

また、ちょっとしたこと(たとえばコーヒーを淹れてくること)もできず、体力・精神的にも負荷が高い。

だから、ミーティングの設定時間を少し短め(25分や50分)としておこう。たとえば、Google Calendarであれば「会議の迅速化」というオプションを有効にすると、自然と1時間ではなく50分の予定が入れられるようになる。

アジェンダや資料を事前に用意して送る

アジェンダを事前に用意して、参加者へ配っておこう。参加者はアジェンダを見ることで、準備ができるし、もしかしたら会議参加が不要と判断できるかもしれない。

何らかの説明資料があるなら、先に送っておいて、できれば読んでおいてもらう。もし、参加者全員が読んでこないという前提条件があるならば、会議冒頭の5-10分間はだまって、みんなで資料を読んでもいい。(Amazonの会議方法に近い)

音声以外のサイドチャネルを用意しておく

不測の事象で突然、音声が切れることがある。この場合、何らかの手段で会話相手とコンタクトする必要がある。

同じチームであればSlackやTeamsでチャット、また使っているWeb会議サービスのチャットでコミュニケーションを取るなど、必ず音声以外のチャネルで相手と連絡できるようにしておこう。 

音声が聞こえない場合は、すぐに伝える

何らかの問題で音声が聞こえてない場合は、すぐに伝える。前項のサイドチャネルなどを使って、メンションして音が聞こえていないことを伝えよう。

後から「さっきの、聞こえてなかったんですが、もう一度説明してくれませんか?」というのではなく、リモート会議を先に止めたほうが、全体として良い会議になる。

ネットワーク回線は安定したものを

4G(将来的には5G)よりもFTTHのほうが安定する。モバイル回線は時間帯によっては、混雑してパフォーマンスが悪化することがある。FTTHのほうが安定しているため、可能であれば固定回線を利用する。

また、宅内も無線LANよりも有線LANの方がもちろん安定する。(ただし、無線APに距離が近い、5GHz帯が空いているなど無線でも問題ないケースも多い)

最初に資料を説明して始めるぐらいなら、先に録画して配っておく

よくあるミーティングの始まり方として、最初に誰が何らかのドキュメントをプレゼンしてからディスカッションや質疑応答に入っていく、というものがある。

この場合、最初の説明パートは同期的にやる必要は実はあまりない。何らかの手段(たとえば、Google Meetで1人会議を録画して保存されたG Suite上のファイルのURLを共有する)によって、先に配布して見てもらおう。

こうすると、人によっては2倍速で確認もできる。会議は、早い段階で本題のディスカッションから入れるようになるだろう。

またちょっとした質問なら、会議に参加しないという判断で、チャットで1-2つ質問して終わり、とすることも可能だ。こうすれば、同期的に参加する必要がなくなり、参加者はより柔軟に時間を使えるようになる。

議事録をライブでとる

Google DocsやConfluenceなど、共同編集できるドキュメントサービスを使って、リアルタイムで議事録をとろう。持ち回りで、または誰かが率先してとるのが望ましい。

もしかしたら、リモート会議の録画を議事録代わりにしているかもしれないが、ビデオは、ドキュメントに比べて情報のキャッチアップに時間がかかる。また、録画しても面倒になって結局みない、というケースもある。

だから、議事録やメモを残すようにしておこう。なお、メモで特に重要な場所に、「30:00前後でXXというトピック」などメモしておくと、重要な箇所だけ見返せるようになり、ちょっと便利になる。

ファシリテーションのメソッドを使う

たとえば、会議ファシリテーションの手法の1つに、チェックインという手法がある。会議の冒頭で「今回の会議で期待していること」「最近気になっていること」などを、参加者全員が1人1分程度で発言する手法だ。

リモート会議が始まるタイミングは、場が温まっていないこともあり、全員がカジュアルに意見を出しにくいことがある。そこで、会議開始のプロセスの1つとして全員1度話すことによって、雰囲気を柔らかくできる。また、一度でも発言していることで、質問をするためのハードルも下げられる。

もし会議に初対面の参加者が含まれているなら、自己紹介するのも効果的だ。

ファシリテーターは指名して質問をふる

会議を進行するファシリテーターは、発言していない・少ないメンバに質問を振ろう。

外交的なメンバは自然に発言が多くなるが、内向的なメンバは発言が少ないケースが多い。オフラインの会議ですら難しいのに、オンラインではより難易度が上がってくる。だからファシリテーターから明示的に「XXさんはどう思いますか?」と質問して、発言チャンスを生み出す。これによって、多様な意見を導き、会議をより効果的なものにする。

最後にタスク、期限、アサインを確認する

リモート会議の最後に、次のToDo一覧(タスク一覧)、いつまでにやるかという期限、誰がやるのかというアサインを明確にしておこう。議事録をリアルタイムでとっているなら、そこにまとめたものを参加者全員で確認する方法が良い。

仮にその会議が定期的に実施するものなら、次の会議の冒頭でToDo一覧を確認していこう。これで、Todoを落としにくくなる。

おわりに

個人的に良いと思うリモート会議のプラクティスを紹介した。本記事を読んでいただいた方が参加するリモート会議の質・効果が少しでも高まればと思う。

参考