「うーん、よくわからない。」という回答は情報価値が高い
はじめに
The Mom Testという、海外のプロダクトマネージャー御用たちの書籍がある。残念ながら、まだ邦訳は存在しないが、非常に有用な内容が詰まっている。
本記事では、3章の「Asking important Questions」を読み直している中で、自分なりの解釈や所感を自分用に残しておく。
重要な問い
ユーザーインタビューやソリューションインタビューを行う際の重要な問いとは、そもそも何か? それは次のような問いである。
- その答えがビジネスを完全に変える(または否定する)可能性がある
- 予期しない答えが返ってきても、やっていることに影響を与えない場合は、重要な質問ではない
- 会話の中で少なくとも1つの質問に恐怖を感じるべき
最後の「恐怖を感じるべき」という点はかなり興味深い。これは、自然と避けてしまいがちな傾向を表している。なぜ避けやすいかというと、「そもそも事業アイデアに根本的な欠陥があると判明するかもしれない」からだ。
重要な問いを避けている、悪いインタビューの例
仮に、読書アプリを開発しているとする。その際の悪いインタビューの例を挙げてみよう。
- 起業家:「読書習慣について話を聞かせてください。読書アプリを開発しているんです」
- 顧客:「実は本はほとんど読まないんです。時間がなくて」
- 起業家:「どんなジャンルの本なら、たまに読みますか?」
- 顧客:「えーっと、まあ、たまにビジネス書を手に取ることはありますが…」
- 起業家:「その場合に、読書アプリに欲しい機能は何ですか? 読書進捗の管理とか、メモ機能とかどうでしょう?」
- 顧客:「うーん、よくわからないです」
これは完全にイマイチで、「本を読まない」といっているのに、読書機能についてどんどん質問してしまっている。
「うーん、よくわからない」という回答の価値
先ほどの例で挙げた「うーん、よくわからない」という回答は、実は非常に価値が高い。なぜなら、顧客がそのニーズに対して本当に関心がないことを示しているからだ。「それ、いいかもね」といった回答も同様。多分、顧客は全然惹かれていない。
こういったふわふわした回答こそが、真実を示すシグナルになっている。つまり、顧客がそのニーズに対して「本当に関心がない」「そもそもニーズを感じていない」ということを示している。
重要な問いを投げかける
読書アプリを前提にするのではなく、もっと幅広い視点で質問を変更して投げかけていく。
- 「読書に対して、本当にニーズを感じていますか?」
- 「読書にどれぐらいお金を使っていますか?」
いずれにせよ、顧客の優先順位を理解しようと試みる。「そもそも、本当にニーズがあるのか?」「顧客はそのニーズのために、時間やお金を使う意欲があるのか?」これを探っていく。
ニーズがないのであれば、ビジネスが否定される可能性がある。そうなったら、別の顧客セグメントに焦点を当てるか、ビジネスモデル全体を見直す必要がある。
良い掘り下げ方
「幅広く始めて、強いシグナルを見つけるまで焦点を絞らない」
これが基本原則。何か引っ掛かる部分(シグナル)が見つかったら、そこを掘り下げていく。
例えば、「今の大きな問題は何ですか?」「今、いちばん時間を取られていることは何ですか?」「いちばん気になっていることは何ですか?」といった質問から始める。
回答からシグナルが見つかったら、さらに掘り下げていく。そのために、
- 「その問題をどの程度真剣に考えていますか?」
- 「それでお金を稼いでいますか?」
- 「それでお金を稼ごうとしたことはありますか?」
- 「それに週にどのくらい時間を費やしていますか?」
- 「そのために使っているツールやサービスはありますか?」
- 「すでに改善のために何をしていますか?」
といった内容を聞いていく。これを継続的に探し続ける。その際、ビジネス全体の実現性を意識すべき。顧客が欲しがっていても、市場が小さすぎたり、競合が強すぎたりすると、ビジネスとしては成り立たない可能性があるため。
まとめ
- 重要な問いから逃げない
- 顧客のふわふわした回答を大切にする
- シグナルを見つけて掘り下げる