はじめに

これまで、エンジニアリングマネジメントに関する本を何冊か翻訳してきました。どれも学びが多く、実践につながる内容です。

一方で、翻訳しながらずっと感じていたこともあります。

  • 日本の現場にはそのまま当てはめにくい
  • 理解はできるけれど、個人的にはあまり共感できず採用しづらい
  • 要点は有用。だが、そこに至るまでがやや冗長で、時間がないマネージャーは読み切りにくい

私自身のN=1ではありますが、共感した部分や実践して有用だった部分を軸にして、もっと手早く読める形でまとめたいと思いました。自分自身がすべてできているわけではありませんが、そこは棚に上げつつ、こうするとうまくいく、あるいはうまくいったものを現時点でのスナップショットとして残しておきたいと思っています。

本書で作りたいもの

目指しているのは、エンジニアリングマネージャーになったばかりの人が、最初に短時間で読めて「だいたいこれぐらいやれば及第点を取れる」という内容です。

  • 1トピックは短く
  • 全体を30分、長くとも1時間で読み切れる
  • 読んだ直後から使える

まずはこのブログに連載として書き、フィードバックにもよりますが最後に再編集して1冊の本にまとめられないかと思っています。1

なお分量イメージとして近いのは『新1分間マネジャー』のようなサイズ感です。2

前提にする考え方

エンジニアやテックリードがマネージャーになるのは、ほぼ転職に近い変化だと思っています。求められるスキルセットが大きく変わるからです。

そのときに大事なのは、「唯一の正解」を覚えることではなく、文脈に合わせて使える手札を増やすことです。状況に応じて出せるカードが多いほど、現場で柔軟に対応できるようになります。もし手札が少なければ、毎回同じカードを出すことになり、うまくいかないときのリカバリーも難しくなります。

マネジメントに絶対の正解はありません。例えば、よくアンチパターンとして挙げられるマイクロマネジメントは必ずしも悪ではありません。マイクロマネジメントは平時には副作用が強い一方で、危機対応では有効に働く場面があります。厳しい状況では、壮大なビジョンを語るより、目の前のタスクをこなすことのほうが重要になることもあります。

これから扱うテーマ

今のところ、次のようなテーマを扱う予定です。

  • 方向性を明確にして、理解と共感を得るのがすべて
  • 環境を作ったうえで、信じて任せることの難しさ
  • ビジョン・戦略・戦術って結局何なんだ?
  • やらないことを決める重要性
  • 「やめる」判断は、結局リーダーにしかできない、サンクコストを厭わない
  • 意図的に採用に時間を使う
  • なぜ一人の責任者を決めることが重要か
  • なぜオーナーシップを持たせるべきか
  • 自分がいなくても回る環境をどう作るか
  • 1on1は有効だが必須ではない
  • ティーチング、メンタリング、コーチングの違いと使い分け
  • 意思決定の方法:多数決はうまくいかない
  • マネージャーが背中を見せることで文化を築く
  • マネージャーが学ぶ姿勢を見せること、技術を追い続けること
  • マネージャーからICに戻るのは簡単ではない
  • 信頼貯金をどう作り、どう使うか
  • メンバーに数年後のなりたい姿を言語化してもらう難しさと向き合い方
  • 業績評価をどう伝え、どう納得を得るか
  • フィードバックを受ける/渡す技術
  • コミュニケーションを整えるための「取扱説明書」
  • 判断基準や期待値を、できるだけ言語化すること
  • 期待値を上げすぎない運用と、精神的ダメージを減らす考え方
  • 権限が弱い状態で変化を起こす方法
  • 社内外のネットワークがなぜ効果的なのか
  • ミーティングは少ないほど良い
  • 定例ミーティングのなくし方
  • アカデミックな知見の活用方法と限界
  • ファシリテーション技術はレバレッジが効く
  • KPIなどのメトリクスをどう設計し、どう使い分けるか
  • セルフマネジメント:高いパフォーマンスを出し続ける方法
  • チームビルディングとふりかえり
  • 組織デザインの基礎と「例外」を扱う視点
  • 上司に活躍してもらう
  • 他部署との共通言語の作り方
  • 焦らない、楽観的に構えておく

実際に書いてみて、内容や順番は変わるかもしれませんし、このリスト自体も変わるかもしれません。最終的には、何らかの法則に沿ってカテゴライズすると思いますが、今のところは書けそうなところから書いていこうと考えています。

結局一番大事なこと

マネージャーの成果は「仲が良いチームそのもの」ではなく、どんな手段であっても、組織が出したいアウトカムを出せるかで判断されます。チームビルディングや合意形成は、そのための重要な手段の1つです。最前線でコードを書くことも、採用に時間を使うことも、部署をまたいで仲間を増やすことも、環境を整えて信じて任せることも、すべてはアウトカムを出すための手札の1つだと考えています。

というわけで、次の記事からは内容に入ってきたいと思います。お楽しみに!3

  1. もし出版社の方で興味がありましたら、footerの連絡先までご連絡ください 

  2. 出版するには短すぎて難しいかもしれません 

  3. 反応次第で、ひっそりと終わる可能性もあります