生成AIをなんらかの叩き台の作成に使うという話や記事はいくらでも出てくる。だが、AIを使って初手から完全に叩き台を作らせない方が良い。この文章も、95% は手で書いている。

理由はアンカリング効果にある。簡単に言えば、最初に提示された情報が、その後の判断を強く縛ってしまう現象のことだ。

アンカリング効果では例えば、「トルコの人口は3500万人より多いか?」と尋ねられた後に具体的な人口を推定してもらうのと、「1億人より多いか?」と尋ねられた後に推定してもらうのでは、回答結果が大きく異なる。(なお、このパラグラフのみ、AIの力を借りて補強情報をまとめている。引用した例は HBR’s 10 Must Reads on Decision-Making, Updated and Expanded より)

転じて、AIに初手で叩き台を丸ごと作らせてしまうと、その情報がアンカーとなって人間の思考を強く引っ張る。初手からAIを使ったものは結果的に、自分の考えではなく、それっぽい情報を羅列したものになりやすくなる。何よりつまらないものが出来上がる。

もちろん、全行程でAIを全く使わないわけではない。大事なのは使うタイミングである。具体的にどうすべきかというと、任意の入力手段でまずは自分が言いたいことを箇条書きで書いてしまう方法が良い。自分の言いたいことが尽きるまで、箇条書きでもキーワードでもなんでも良いので、一旦出力してしまう。(音声入力が使えれば、一旦それで話し切ってしまうが個人的にはおすすめ)

おそらく、しばらく自分で文章を書いていないと、このプロセスがひどく苦痛に感じられるだろう。でも、その状態が正しいのだと思う。

このポストでまとめたように、「文章を書くことは筋トレと同じ」というのはまさにその通りだろう。筋トレを他人にやってもらっても意味がない。筋肉が自分についた状態こそ、思考の解像度が上がっている状態である。

叩き台を最初から作らせない。それだけで、体得できるものがだいぶ変わってくるはずだ。